研究室の概要  



物性物理学教室では、固体電子系の基礎物性、特に電子系の動的な性質についての総合的な理解を得ることを目的とした実験的研究を行っている。研究対象として、有機伝導体、有機超伝導体、有機磁性体およびメゾスコピックなサイズを持った金属薄膜をとりあげている。とくに、有機伝導体の性質の探求はここ数年来の中心課題である。こうした物質の電気伝導特性、磁気的特性、熱的特性を室温から最低 0.5K にいたる温度域で測定し、その結果を総合して、電子の動特性を理解することを目指している。

実験手段は直流電気伝導度測定、低温比熱、静帯磁率、ESR(10GHz)、交流帯磁率と広範にわたっている。こうした実験装置は、液体ヘリウムを用いた低温装置(4He冷凍器、3He冷凍器、3He-4He希釈冷凍器)、及び磁場発生装置(1.5T電磁石、7T、5T、10T超伝導磁石)と組み合わせられて、室温(絶対温度300K)から極低温(絶対温度0.05K)に至る温度範囲、及び 10T までの磁場中での物性測定が可能である。なお、交流磁場による輸送現象測定を目的として、変調磁場発生系の製作に着手しており、1997年度には完成の予定である。

一方、有機分子性の伝導体・磁性体の単結晶を育成し分析する設備を保有している。この設備は,ガラス製(真空/アルゴン)ライン,ドラフト換気設備,エヴァポレーター(減圧溶液濃縮器),グローブボックス,低温恒温槽などを組み合わせたものであり,空気中では不安定な物質も含めて、加熱・冷却撹拌,再結晶,有機溶媒の脱水蒸留精製などの有機化学反応操作が可能である。単結晶育成は主に電解結晶法でおこなっている。
ほかに、試料作成装置として,スパッタリング装置、真空蒸着装置、高温電気炉を使用している。さらにメゾスコピック試料作成のための走査型電子顕微鏡が稼働している。