(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4の金属ー非金属転移と比熱

 



(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4は20K以下の温度範囲で帯磁率、電気抵抗、ESR等に大きな増大が観測され、磁性と伝導の関係に興味がもたれる物質である。電気抵抗の急激な上昇の機構、また上昇後の低温電子状態について調べるため、転移温度(20K)近傍と,4K以下の温度領域に重点を置いて比熱の精密測定を行った。その結果,20K近傍には比熱の跳びが観測され,しかも,温度の昇降の両過程で,2-3Kのヒステリシスを伴っていることが明らかになった。この実験によって,転移が1次の相転移であることが判明した。また低温では,他の有機伝導体と比較して10-20倍大きな電子比熱が観測される試料と,低温で電子比熱が消滅する試料とが存在することが明らかとなった。今後、伝導、磁性、熱的性質の多面的な研究が望まれる。