分子性導体の物性



ここ十数年の間に有機伝導体の物理学は非常に進歩した。
これには、フェルミ面の形状を調べる方法が確立して,フェルミ面と物性との関係を議論できるようになったことの寄与が大きい。対象となる物質の範囲も広がり、一次元的なフェルミ面と,二次元的なフェルミ面が共存している物質や、磁性と伝導との関わりが問題になるような物質(例えば(DCNQI)系有機伝導体)なども研究されている。

この分野において日本の果たしている役割は大きいが,特に(DCNQI)系伝導体の物理は,東邦大学の化学科におられた小林速男氏のグループによってその重要性が指摘され,研究の主要な部分が小林氏のグループをはじめとして,私たちのグループを含む日本の研究者の手で行われたことが特筆される。

最近では,伝導電子間の相関の問題がクローズアップされてきている。電子相関は高温超伝導体の出現以来,さけては通れない問題として特にその研究が活発化しているが、有機伝導体も電子相関研究のモデル物質として注目されつつある。