東邦大学

#2414 宇宙物理学教室

宇宙物理学教室はどんな研究室

宇宙は、微視的な素粒子にはたらく力や巨視的なスケールで卓越する重力などが支配するさまざまな物理過程が複雑に絡まり合いながら成り立っています。宇宙物理学教室では、これらを考慮しつつ、中性子星・ブラックホールといった高密度天体、銀河・銀河団などの大規模構造、宇宙全体の進化などについて理論研究を行っています。また、最近の進展が特に顕著な重力波の観測や、さまざまな波長の電磁波観測に関する研究も行っています。

研究室の紹介(修士1年のCさんとSさんによる)

宇宙物理学は未知の事が多い分野で、これまで学んだ物理学の知識をフル活用して研究を行います。日々の学習では、一人で考えていても分からない問題も出てきますが、研究室の仲間と協力しながら解決し、互いに助け合って勉強しています。

実際のゼミの様子

ゼミで知識や思考力を培ったら、いよいよ卒業研究です。
過去の卒業研究では、銀河を対象とした研究やブラックホールの研究が行われています。
また、外部研究として国立天文台と提携して装置開発の研究を行うこともできます。
私たち宇宙物理学教室は理論の研究室ですので、実験装置はありませんが、高性能コンピュータ、国内外の専門書、大型のホワイトボード付のゼミ室、などが研究設備として備わっています。

研究設備

「銀河やブラックホール、宇宙の成り立ちについて知りたい!研究したい!」
「物理で学んだ知識を活かして宇宙の謎を明かしたい!」
というような思いを持って入ってくる学生が多いです。まだまだ未知である宇宙を調べるという共通の目的を持って、和気あいあいと日々勉強に励んでいます。

どんな研究をしていますか?

〇Aさん(博士2年)

重力波は時空のさざなみとも呼ばれる時空の歪みが波となって伝わる現象で、2015年の直接検出により重力波を用いて宇宙を探る、重力波天文学の幕が上がりました。重力波は光では得られない情報をもたらしてくれるだけでなく、重力理論そのものを検証するための道具にもなります。私はスカラーテンソル理論と呼ばれる、一般相対性理論を拡張した重力理論の、重力波を用いた検証を念頭に研究を行っています。特に、大質量星が自身の重力に耐えられずに中性子星に潰れる、重力崩壊の数値シミュレーションを行い、放射される重力波の性質を調べています。

研究内容

〇Mさん(修士2年)

近年の研究によって、宇宙の組成は、地球上と同じような原子からなる物質(バリオン)はわずか5%程度であり、残りの95%は未知のダークマターやダークエネルギーであることが示唆されています。ダークエネルギーとダークマターは正体不明ですが、より身近なはずのバリオンについても謎があります。それは、近傍宇宙の観測で検出されている恒星やガスなど全て足し合わせても、推定されるバリオン量の半分にも満たないという事です。このように直接検出できていないバリオンは「ダークバリオン」と呼ばれ、その所在は大きな未解決問題となっています。私は、ダークバリオンの有力候補である希薄銀河間ガスの性質を数値計算によって調べることで、ダークバリオンの検出可能性を明らかにする
ための研究を行っています。

研究内容

〇Sさん(修士2年)

私はアインシュタイン方程式がその存在を予言するワームホールの観測による検証を目的として、ワームホール時空の周りに光子を放つとその周りがどのように見えるのかについて研究しています。ワームホールは時空の2点をつなぐトンネルのようなもので負のエネルギーの仮定が必要となるため現実的には存在しないと考えられてきました。しかし現在研究が進み、人が通れるような安定したワームホールの存在の可能性についての論文も出てきています。現在はワームホールの見え方をシミュレーションするために様々な条件を考慮しながらプログラムのコード作成に励んでいます。