2009年度研究概要
実験内容・名称 |
ニュートリノ振動の研究(OPERA実験) |
研究概要 |
国際協力実験OPERAはニュートリノ振動の結果出現した異種ニュートリノを検出して この現象の確認に決着をつけることを目指している。
欧州原子核研究機構(CERN)から発射されたミューニュートリノビーム中に
タウニュートリノが出現することを約730km離れたグランサッソ地下研究所で観測する。
タウニュートリノ反応はタウレプトンの特徴的な崩壊を高分解能の原子核乾板 (エマルションフィルム)で観測して識別する。
標的質量1250トンの実験装置は原子核乾板・鉛板を積層したECC検出器と電気信号検出器を組み合わせて製作,
建設されたものである。2008年から本格的な照射実験が始まった。 同時に集められたニュートリノ反応の測定も急ピッチで進められ,
すでに1000例を超えるニュートリノ反応が解析された。 その中から1例のタウニュートリノ反応候補が検出された。
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実験内容・名称 |
全天監視宇宙線望遠鏡による高エネルギー宇宙線の観測実験(Ashra) |
研究概要 |
Ashraは全天を覆う視野を持ち,イメージインテンシファイアを
用いた高精度広視野光電撮像系を持つ望遠鏡ステーション3基を米国ハワイ島に建設し,
光学閃光観測,TeV領域のガンマ線,高エネルギー核子,
および高エネルギーニュ-トリノの同時観測が可能な宇宙線望遠鏡である。
2005年7月にハワイ島のマウナロア山頂のAshra観測地に対してハワイ州から土地の利用許可が下り,
ステーションの建設を開始した。2007年度夏に大規模な集中建設を行い,
27機の集光器を収めるシェルターがサイトに完成した。2008年6月より物理観測を開始した。
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実験内容・名称 |
B-ファクトリーにおけるCP対称性の破れの研究(KEK Belle) |
研究概要 |
B-ファクトリーは高エネルギー加速器研究機構(KEK)において8.0GeVの電子と3.5GeVの
陽電子を衝突させることによりボトム・クォーク対を大量に生成し,
「CPの破れ」の起源を探る計画である。
本研究室は粒子同定装置の開発を他の研究機関と共同で推進し,
実際にBelle検出器内部に設置した。
2001年7月のB中間子における間接的CP非保存の発見,2003年度には直接的CP非保存の発見,
数種類以上の新粒子の発見が報告され,豊富な物理を提供している。
さらにKEKでは,更なる高輝度実験に向けて,Belle検出器のアップグレードを計画している。
粒子同定装置では,端管部を輻射体にエアロゲルを用いたリングイメージチェレンコフ検出器
のアップグレードを計画しており,本研究室も検出器要素の開発に参加している。
本研究室では,特に,チェレンコフリングの検出に用いるため,
2次元に多チャンネル化した,アバランシェフォトダイオードを組み込んだ,
ハイブリッド型の光電子増倍管(HAPD)の開発に取り組んでいる。
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実験内容・名称 |
Kビームによるダブルハイパー核とH粒子の研究 (KEK E373,J-PARC E07) |
研究概要 |
KEK-PSのKビームをエマルション・ハイブリッド実験装置に打ち込み,
準自由反応Kp→KΞにより生成されたΞ粒子をエマルション中で静止吸収させ,
その結果生成されるS=-2 原子核を観測し,詳細に解析する。
この手法で世界初の確実なダブルハイパー核の観測に成功したE176実験に続き,
検出器を改良したE373実験も本格的な解析が進行中でラムファ等のダブルハイパー核崩壊事象が
次々に観測されている。
さらに,大強度陽子加速器施設(J-PARC)でもその特長を生かしたE07実験を準備中である。
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実験内容・名称 |
磁場印加型エマルション検出器の基礎研究 |
研究概要 |
将来のニュートリノ振動実験ではニュートリノ反応と反ニュートリノ反応の識別が重要で,
その実現のため有望視されている検出器候補の一つが磁場印加型エマルション検出器である。
その基礎研究として各種のビーム照射実験を行っている。
2009年度はCERN 陽子シンクロトロン(PS)において2種類の磁場印加型エマルション検出器に
πビームと電子ビームを照射した。
その結果,10 GeV/cにおいても十分な運動量測定精度・電荷識別能力が得られることがわかった。
一方,エマルション検出器製作上の課題も明らかになった。
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実験内容・名称 |
重イオンビームによる核破砕反応の研究 |
研究概要 |
放射線医学総合研究所の重イオンビームを用いた研究は,
素粒子実験のために開発された原子核乾板の技術を核破砕反応の研究に応用し,
医療分野や宇宙放射線環境分野にも貢献することを目標にしている。
本研究室は破砕原子核の同位体分離用に永久磁石を用いた
コンパクトエマルションスペクトロメーターを持ち込み,
炭素ビームを照射して運動量測定精度を調べた。物理解析も進行中である。
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Produced by Toho University.
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